ペットシッター開業前の商圏分析【現役ペットシッター/資格講師が解説】
こんにちは。
現役ペットシッターでペットシッターの資格講師をしているさいとうです。
ここでは、ペットシッター開業前の商圏分析というテーマでお話しします。
ペットシッターの開業を成功させるポイントは3つです。
市場環境 × サービス・料金設計 × 営業活動
中でも「市場環境」「サービス・料金設計」は開業前の段階でしっかりと調査分析・設計が必要です。
開業前のエリア設計に失敗すると、後々顧客が少ない・極端に時間単価が低いといった問題に直面します。
開業前にしっかりと商圏分析してサービス・料金設計するための注意点を詳しく解説します。
それでは始めましょう。
営業エリアを決める際のポイント
ペットシッターを新規開業するにあたって、どこからどこまでを営業範囲にするのかを決める必要があります。
とりあえず近所から始めてみようかな…?
ちょっと待って
大切なことだからしっかり考えよう
気をつけたいポイントが3つあるよ
- 規模
- 競合
- 距離
ひとつずつ見ていきましょう。
1.規模
1番目の「規模」とは、「ビジネスが成り立つ商圏規模があるか?」です。
これから営業していくエリアがこのポイントを満たさないと、お客様が少なすぎて続けていけない事態になりかねません。
具体的にどれくらいの規模が必要なの?
次の例をもとに見てみよう
商圏規模の考え方の例
ここからは上の図を元に見ていきます。
営業エリアの規模を考える時に考慮するポイントは全部で4つあります。
- 世帯数
- ペット飼育率
- 競合件数
- 依頼頻度
1.世帯数
営業エリアにしようとした地域の人口を仮に10,000人とした場合、10,000人全てが顧客の対象になるわけではありません。
第一に、ペットの飼育は基本的に個人単位ではなく世帯単位です。
当然、ペットシッターに依頼するときも世帯単位になります。
例えばご夫婦で猫を2匹飼っていて、ご夫婦それぞれから猫のお世話を1匹ずつ別々に依頼されるなんてことは通常考えにくいですよね?
ですから営業エリアを設定するとき、どれくらいの依頼が見込めるかを考える際には、人口ではなく世帯をベースに考えることになります。
人口10,000人に世帯人口比率の全国平均約48%を当てはめるとエリア内の対象世帯は4,800世帯になります。
2.ペット飼育率
第二に、すべての世帯がペットを飼っている訳ではありません。
地域差はありますが、全国平均だと2023年のペット飼育率は約38%です。
人口10,000人→4,800世帯の内、ペット飼育率38%を当てはめると、エリア内の対象世帯は1,824世帯になります。
かなり顧客候補の対象が絞られてきましたね。
3.競合件数
さて、この営業エリアに決めた地域には、ライバルになる競合は何件あるでしょうか?
ペットシッターにとっての競合は、ペットシッターに限りません。
ペットシッターの競合=「ペットの飼い主さんが留守などの際に取り得る選択肢すべて」です。
- ペットホテル
- ペットシッター
- 家族に頼む
- 友人に頼む
- 自動給餌器・自動給水器・自動トイレなど
意外とライバルが多いんだ
ただ今回はシンプルに、目に見える「ペットホテル」と「ペットシッター」の2つを競合として考えてみます。
仮にこの営業エリアに元からペットホテルが2軒、ペットシッターが1軒あって、自分は4軒目として開業したとしましょう。その場合、基本的に自分も含めた競合の数で、顧客を取り合うことになります。
もちろん認知度や口コミ評価、広告戦略などの影響で単純な等分ではありませんが、計算式としてはこうです。
ペット飼育世帯1,824 ÷ 競合4社 = 顧客対象456世帯
これが潜在顧客数の推定上限と考えていいでしょう。
4.年間依頼頻度
最後は年間の売上を予測するために、お客様1組あたりの年間依頼数について考えてみます。
年間売上は、年間依頼数 × 依頼単価で決まります。
年間依頼数は、顧客数 × 年間依頼頻度で計算できます。
年間依頼頻度とは、お客様が1年間にお世話を依頼する頻度のこと。
お客様は年に1回旅行に行く人もいれば、多いと毎月や毎日お世話を依頼する人もいます。
反対に2〜3年に1回の依頼のお客様も場合もあります。
これを1年間で平均したものが年間依頼回数になります。
仮に顧客の対象となる456世帯の年間依頼頻度が2年に1回、つまり0.5回とすると年間依頼数は456世帯 × 0.5回 = 228回です。
依頼あたりの単価が12,000円の場合、年間の売上見込みは、
年間依頼数228回 × 依頼単価12,000円 = 2,736,000円
となります。
このように当てはめて計算した数値で、最低でも生活が成り立つ規模のエリアを営業エリアとして設定しましょう。
ざっくりとした目安として個人的には人口10万人以上、できれば20万人以上の規模でエリア設定するのがオススメです。
2.競合
先ほども触れたように、営業エリア内に競合がある場合は競争が発生します。
基本的に競合がない方が市場を独占できるメリットがあります。
ただし、競合がない=ペットシッターというサービス自体が認知されていないということなので、認知0から知っていただく難しさがあります。
逆に、競合があることはデメリットな面だけではなく、メリットもあります。
競合の有無それぞれのメリット・デメリットを考慮して営業エリア・サービス・料金設定を決めましょう。
3.距離
最後に営業エリアの距離と時間です。
営業エリアの端から端まで移動した場合にかかる時間を考慮して、エリアを設定する必要があります。
移動距離と時間を間違えると、一生懸命働いても時間単価が極端に低いということになりかねません。
どういうこと?
移動時間も私達の時給が発生しているからだよ
例えば、
朝→営業エリアの北端でお世話
昼→営業エリアの南端でお世話
夜→営業エリアの北端でお世話
こんなスケジュールの場合、1回の移動時間が2〜3時間もかかるようでは、3件だけで1日が終わってしまいます。他のお世話を受ける余裕はありません。
時間単価を意識しよう
上の例で、お世話1回の単価が仮に3,500円とします。
3,500円×お世話3件=10,500円の売上ですが、移動時間含めた稼働時間が仮に12時間の場合、時給は875円です。
お世話時の訪問以外にも、事前打ち合わせや鍵のお預かり・お返しの訪問にも稼働時間は発生するわけですから、実際の時間単価はもっと低くなります。
これでは疲弊して、いつか体を壊してしまうことになりかねません。
開業前からお世話でスケジュールがいっぱいになった時の移動距離や時間を考慮して営業エリアを決めることをおすすめします。
まとめ
今回はペットシッター開業前の市場調査・営業範囲の決め方について気をつけたいポイントを3つ紹介しました。
- 規模…人口(世帯)が少なすぎると集客が大変。目安10万人以上。
- 競合…あってもなくてもメリット・デメリットあり。
- 距離…端から端の移動距離・時間を考えてエリアを設定しよう。
ぜひ参考にして見てください。
より良いエリア設計ができることを願っています。
それでは。