ペットシッターの開業前シミュレーション【現役ペットシッター/資格講師が解説】
ペットシッターで独立したいけど、ペットシッター1本で食べていけるか不安!
こんなお悩みはありませんか?
私は普段、ペットシッター開業要件の資格講師をしていますが、この質問は研修をしていて必ずと言ってもいいほど、よく聞かれます。
実は開業前にこの不安を払拭する方法があります。それが開業前シミュレーションです。
なぜなら不安に感じる原因は、開業した後のことがはっきり想像できていないから。
私は現役のペットシッターでもありますが、ペットシッターになろう!と決めた段階で開業後のシミュレーションをすることで、迷うことなく事業を軌道にのせることができました。
この記事ではペットシッターの開業前シミュレーションについて解説します。
この記事を読むと、ペットシッターの収益構造や必要なお世話回数を理解でき、ペットシッターで生活していけるか?という不安を払拭できます。
結論をいうと「生活していけます!」が答えだよ
それでは始めましょう。
前提条件
シミュレーションの前に、まずペットシッター1本で食べていける状態とはどういう状態か?を定義する必要があります。
ただ、これは環境や状況によって全く違いますので、一概に言うのは難しいです。
例えば、
- 住んでいる地域(都会 or 地方)
- 家族構成(独身 or 既婚)
- 生活費の多い・少ない
- お金の価値観の違い
今回のシミュレーションでは仮に、税金や社会保険料を全部払った後の手取り月25万円とします。
25万円あれば、独身1人暮らしなら暮らしていけるかなと。
ご自身の状況に合わせて金額を当て込んでシミュレーションしてください。
ペットシッターの収益イメージ
月25万円は年間300万円になります。
それでは、この年間300万円を手元に残すために必要な売上はいくらでしょうか?
また発生する費用はどのような種類があり、いくら位かかるでしょうか?
ペットシッターの収益の全体像は次のとおりです。
ペットシッター収益の全体像
順番に見ていきましょう。
売上
年間300万円を手元に残すために必要な売上金額。
結論としては約430万円です。(下図参照)
売上の内訳はお世話代金とお客様宅までの交通費と考えてください。
- お世話代金
- お客様宅までの往復交通費
経費
ここから「経費」が年間約50万円ほどかかります。
といってもこの50万円という金額は、一般的なビジネスの必要経費としてはかなり少ない方です。
例えば店舗型のビジネスの場合にかかる費用を見てみましょう。
- 店舗の家賃…安くても月10万円前後〜
- 仕入れ…取り扱う商品にもよるが売上の50%以上のことも
- 水道光熱費…飲食店の場合月数万円〜
- スタッフの人件費…ひとりにつき月10万円前後〜(営業時間×時給×日数)
店舗の家賃に、商品を販売する場合は仕入れ費用、人を雇う場合は人件費と非常にたくさんのお金が出ていきます。年間だと何百万円もの経費がかかります。
これがペットシッターの場合、かかる経費は概ね下記のとおりです。
- 交通費…お客様宅までの往復交通費の実費(お客様が負担)
- お世話消耗品・・・基本的にお客様宅のものを使うが予備として
- 広告宣伝費・・・チラシ、ホームページ維持、WEB広告など(月数千円〜1・2万円程度)
合計で年間およそ50万円前後。
他業種に比べ、かなり少なくて済みます。
上記以外にも家事按分といって、プライベートと仕事の両方で使うものに関しては仕事で使う分を経費にすることができ、その分社会保険料と税金を抑えることができます。
- 地代家賃・・・賃貸などの家賃の内、仕事で使用する分
- 水道光熱費・・・水道代・ガス代・電気代の内、仕事で使用する分
- 通信費・・・スマホ代金の内、仕事で使用する分
- 車両関連費・・・自家用車に関連する費用の内、仕事で使用する分
利益
430万円の売上から50万円の経費を引いた380万円が「利益」になります。
ここから社会保険料と税金を約80万円支払います。
社会保険料・税金
ペットシッターが納める社会保険と税金の種類は次のとおりです。
- 国民健康保険
- 国民年金
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税(課税事業者の場合)
ペットシッターを開業する場合、ほとんどの方は個人事業主から始めることになりますので、国民健康保険と国民年金への加入が必要です。
それと所得税・住民税・一定以上の所得がある個人事業主が支払う個人事業税を支払った残りが300万円、1ヶ月の手取り25万円になります。
目標達成に必要なお世話回数
この年間430万の必要売上金額は単位を変えると次のとおりになります。
- 約36万円/月
- 約12,000円/日
今度はこれらの必要な金額を売り上げるためには何回のお世話が必要か?を計算してみます。
《1ヶ月あたり》
お世話の平均単価が交通費含め3,000円の場合
36万円 ÷ 3,000円 = 必要お世話回数120回/月
お世話の平均単価が交通費含め4,000円の場合
36万円 ÷ 4,000円 = 必要お世話回数90回/月
《1日あたり》
お世話の平均単価が交通費含め3,000円の場合
12,000円 ÷ 3,000円 = 必要お世話回数4回/日
お世話の平均単価が交通費含め4,000円の場合
12,000円 ÷ 4,000円 = 必要お世話回数3回/日
サービスの設計をする際には、この計算結果を踏まえて料金を設定をする1つのポイントになると思います。
目標達成に必要な依頼数
ところでこの必要なお世話回数、例えば1ヶ月に必要な120回のお世話をするために、120組のお客様から依頼が必要かというと、そういう訳ではありません。
いくつかのご依頼のパターンから見てみましょう。
依頼1件あたりの売上金額
《ご旅行中のお世話の依頼の例》
- 旅行日程:3日間
- お世話スケジュール:1日目の夕方・2日目の朝夕・3日目の朝
→合計4回のお世話
この場合、お世話の平均単価が3,000円だと3,000円×4回のお世話で、依頼1件あたりの売上金額は12,000円ということになります。
《手術入院される間のお世話の依頼の例》
- 入院予定:7日間
- お世話スケジュール:1日1回
→合計7回のお世話
この場合は、お世話の平均単価3,000円だと3,000円×7回のお世話で、依頼1件あたりの売上金額は15,000円です。
このようにお客様の依頼状況によって依頼あたりの単価は変動しますので、お世話単価≠お客様1件あたりの単価というわけではないということです。
サービス・料金の設計にもよりますが、平均12,000円〜20,000円の平均依頼単価になることが多いように思います。
目標達成に必要な依頼数
平均依頼単価がわかったところで、目標達成に必要な依頼件数を計算します。
《売上目標36万円/月の達成に必要な依頼件数》
依頼あたり平均単価が交通費含め12,000円の場合
36万円 ÷ 12,000円 = 必要依頼数30組/月
依頼あたり平均単価が交通費含め15,000円の場合
36万円 ÷ 15,000円 = 必要依頼数24組/月
1ヶ月あたり36万円の売上を上げるためには平均依頼単価が12,000円の場合30組、平均依頼単価15,000円の場合は24組の依頼が必要です。
この1ヶ月あたり24〜30組の必要な依頼数を集客できるか?が、ペットシッター1本で食べていけるかのボーダーと言えそうです。
なんとなくイメージがついてきたかも!
ビジネスの成長スピード
それではこの依頼数と売上をすぐ達成できる状態になるかというと、そういうわけではありません。
ペットシッターのビジネスの成長のイメージを見てみましょう。
青い矢印が売上、赤い矢印が必要な営業活動の量を表します。
開業初期はお客様からの認知度も低い状態ですし、ペットシッターは外食店のように広告を見ても「美味しそうだからちょっと食べに行こうかな」とはなりにくいのです。
なぜならペットシッターを依頼することはお客様にとって、自宅の鍵を預けて他人を留守宅にあげることだからです。そのため初めて利用する際のハードルが、他業種よりも高めです。
ですから開業初期の段階では、依頼につながる仕組みを作り、知ってもらうための取り組みを継続することがとても重要なのです。
どちらかといえばペットのお世話をするよりも、営業活動をしている時間の方が長いくらいです。
そこから実際に依頼があったら、リピートにつながる仕組みや口コミをお願いしてお客様の声として活用するといった活動をしていきます。
そうしていくうちにリピート利用が増え、さらに口コミを見たお客様からの新規の問い合わせも増えていき、加速度的に売上が上がって最終的には顧客数も売上も最大化するという形になります。
ここに至るまでの時間軸はある程度余裕を持って見ておいた方がいいと思います。
- 今の仕事をいきなり辞めて開業することはしない
- 副業から始める
- ご家族に充分な収入がある
このような状況から始めることをオススメします。
私自身、仕事を辞めて始めたタイミングで、新型コロナウイルスが大流行してとても苦労しました。
ペットシッターのビジネス成功ポイント
ペットシッターとしてビジネスに成功する3つのポイントについても、簡単に触れておきます。
市場環境 × サービス・料金設計 × 営業活動
この3つのポイントをうまく抑えることで成功に近づきます。
気をつけていただきたいのが、このうち「市場環境」と「サービス設計」は開業する前の段階で調べたり決める部分ですので、慎重に設計することをお勧めします。
1.市場環境
1番目の市場環境とは、営業するエリアの環境をさします。
具体的には次のような点です。
- ビジネスが成り立つ市場規模があるか?
- ペットシッター自体の認知度はどの程度か?
- 競合他社はあるか?自社の優位性はあるか?
- 移動距離、移動時間
過疎地などで極端に人口が少ない場合、そもそもペットシッターを必要としてる人が少ない可能性があります。
またエリアに既存のペットシッターが存在しない場合、市場を独占できるメリットがある反面、ペットシッターというサービスそのものを知っていただくことからスタートすることになります。
反対に競合他社がある場合は、ペットシッターのサービスそのものはある程度認知されているため利用していただきやすい環境になっているメリットがある反面、競合との競争になるためサービスや価格面で他社を意識する必要があります。
営業エリアを端から端まで移動する際にかかる時間もあらかじめ考慮しておいた方がいいでしょう。移動時間は売上は発生しませんが、自身の時給はしっかり発生しますので、移動時間を含めた時給換算が安くなりすぎることのないようなサービス・料金設計が必要です。
2.サービス・料金設計
初期のサービス、料金の設定は慎重に行いましょう。
価格を下げる分には後からでも可能ですが、値上げはタイミングが難しく難易度が高くなります。
設計する際に押さえておきたいポイントは下記のとおりです。
- サービス内容・料金設定はお客様にとって魅力的か?
- お客様にとって利用までのハードルが高い状態になっていないか?
- リピート利用しやすい仕組みになっているか?
- お客様目線のサービス内容・伝え方になっているか?
3.営業活動
最後は営業活動です。
どんなにいいサービスでも、知っていただかなければ売上につながることはありません。
営業活動をする上でのポイントは次のとおりです。
- 知ってもらうための取り組みをしているか?
- 取り組みを継続できる仕組みになっているか?
- 広告と広報の違いを理解しているか?
- 問い合わせにつながる導線は適切か?
中でも広告と広報の違いをしっかりと理解して使い分けているかどうかは特に重要です。
最後に
今回はペットシッター開業前のシミュレーションというテーマでお話しました。
皆さんがペットシッターを開業して、軌道に載せていくためのイメージを掴んでいただく参考になれば嬉しいです。
それでは今回のお話は以上です。
最後まで見ていただきありがとうございました。